個人的に感動した物語を勝手に選んでみた!その2〜「青い鳥」重松清〜
今回は、前回に続き「個人的に感動した物語シリーズ第2弾」を決行します。
kobayashinitya.hatenadiary.com
今回は、私の大好きな作家でもある重松清さんの本から一冊
「青い鳥」重松清(著)
中学校の非常勤講師として国語を教える村内。
村内には、カ行とタ行から始まる言葉がつっかえてしまう言わば「吃音」と呼ばれる症状がある。
だから学校の国語の授業ではいつもつっかえてばっかりいる。
しかし、村内先生は決して学校の授業をするためだけに来てるのではない。
ひとりぼっちでいる生徒にそっと寄り添うため・そばにいるため
に来てるのだ。
そのために、村内先生は色々な学校に回ってそんな生徒に寄り添うことをしている。
うまくしゃべれないからこそたいせつなことしか言わないの
村内先生は吃音のことで生徒からバカにされたり、伝えたくても全て伝えることができなかったりすることもよくある。
しかし、大切なことはきっと生徒に届いているはずだ。
青い鳥は村内先生が色々な学校に回っているときに出会った様々な場面や生徒像を描いている短編集になっている。
- ハンカチ
- ひむりーる独唱
- おまもり
- 青い鳥
- 静かな楽隊
- 拝啓ねずみ大王さま
- カッコウの卵
その中でも一番個人的に感動した「カッコウの卵」を引用しながら感想を述べてみる。
あらすじ
児童養護施設で幼少を過ごし、その後父親が再婚して引き取られたものの虐待を受け、自分の居場所も無かった中学生時代を送った松井。
そんな松井と村内先生は松井が中学3年生の3学期に出会った。
村内先生は松井のことを「てっちゃん」と呼び続けていた。
大人になるまでの間、家族に下の名前でたくさん呼ばれないといけない。
てっちゃんは、家族にも下の名前を呼ばれず、一足もふた足も早く社会に出なければならない。
だから僕が呼ぼう、と。
タ行だからすんなり言えず「てってってってちゃん」みたいな風になってしまうのだが…
やがて、てっちゃんは工場で働き、児童養護施設で出会った智恵子と結婚。
そんなある日、てっちゃんは村内先生とたまたま出会い…
そこで子どもができることを発表し、村内先生に祝ってもらえた。
児童相談所という家族に愛されず育った子どもたちでもやがて家庭を作って大切な家族と一緒に幸せに暮らすのだろう。
感想
一般的にカッコウという鳥は、卵を他の鳥の巣に産んで自分は育てず、その鳥に育ててもらうという悪賢い鳥だと言われている。
しかし、村内先生は
カッコウのひなは、成鳥になったら、やっぱり卵を別の鳥の巣に産みつけて、我が子を捨ててしまう。
でも、もしかしたら、羽の色が違う兄弟の中でひとりぼっちだった寂しさを、成鳥になっても忘れないカッコウもいるかもしれない。
そんなカッコウは、やがてつがいになったら、巣を作るかもしれない。
見よう見まねのみすぼらしい巣でも、そこに大切なものを、そっと置くだろう。
卵を温めながら、たいせつなものがそばにいる喜びをきっと知るだろう。
てっちゃんは、見よう見まねで結婚して家庭を作ったのかもしれない。
しかし子どもの時に寂しい思いをしてきたからこそ、家族と一緒に幸せに暮らしたいという気持ちが人一倍強いだろう。
近頃、神戸市のこども家庭センター(児童相談所)で夜間に対応していた職員が未明に相談に訪れた小学6年生の女児を追い返したというニュースがあった。
対応した職員は、ひとりぼっちの子どもたちに寄り添うことが出来ていなかったと感じている。
村内先生のような、たとえうまく喋れなくても「そばにいること」は必ず、意志さえあればできることだろう。
また、てっちゃんは父親や父親の再婚相手の女性から虐待を受けており世話もろくにされていなかった。
てっちゃんは、
遠足の日に、自分でコンビニ勉強をお弁当箱に詰め替えたにも関わらず「お母さんがお弁当を作ってくれた」
「お父さんに参観日のお知らせのプリントを渡すのを忘れたから参観日にお父さんが来れなかった」
などの嘘をつき続けていた。
そのことに対して村内先生は、
嘘をつくのはその子がひとりぼっちになりたくないからですよ。
嘘をつかないとひとりぼっちになっちゃう子が、嘘をつくんです。
と優しくその嘘を受け入れたのだった。
虐待をされていても両親に嫌われたら本当のひとりぼっちになってしまう
その想いから、子どもは虐待を受けていても嘘をついて愛してくれていると言うのかもしれない。
しかし、嘘も優しく受け入れてくれる村内先生みたいな大人が近くにいると、やがて嘘をつく必要もなくなるだろう。
だって、もう嘘をつかなくてもひとりぼっちじゃないから…
そのような悲しい嘘を受け入れてそばにいてくれる大人に自分もなってみたいと思い巡らしている。
きっとふいにあなたの学校にも村内先生が、
「どどどどうもこんにちは、よろしく」とやって来るのかもしれない